アンティークコインの活かし方①~資産保全・資産運用編~
はじめに
アンティークコインは現物資産というだけあって、コレクションとして手元においておける以外にも現実的なメリットがいくつも存在します。
本記事はその中でも、アンティークコインを用いた資産保全・資産運用についてのお話です。
資産保全・資産運用をお考えの皆様に、アンティークコインという優れた手段を知っていただけたらと思います。
以前の記事でコインの魅力として以下の3点を書かせて頂きました。
・柔軟性-グローバルかつ容易に扱える現物資産
・保全性-レアリティが担保する安定的な価格推移
・教養性-ロマンから学ぶ世界史とその背景
これらの魅力はアンティークコインそれぞれに共通のものですが、現物資産としての側面を考える場合に関しては、コインごとに活かし方が異なってきます。
コインの活かし方を決める最も大きなファクターが、「コイン毎の市場価値=値上がり率」になります。
今回はこの「値上がり率」に着目してアンティークコインを3カテゴリに分類し、具体例と共に特徴をまとめてみました。
説明に入る前に、大前提として、アンティークコインは資産の保全の役目を果たし、時に資産運用手段に”成り得る”ものであるということをお伝えしておく必要があります。
一部のコインに投資や投機的な側面があることは事実ですが、本質的には投資商材ではなく、歴史的なロマン溢れる芸術品です。
この点にご注意いただきながら、以下をお読みいただければと思います。
アンティークコインの3分類
①資産保全型コイン
時間をかければ購入時より価値が上がる可能性が比較的高く、年間の値上がり率が最大で5~10%程度見込めるコインを、弊社では「資産保全型」と捉えております。
一定の希少性や人気を持っていて、それが市場に認知されているコインが主に当てはまります。特定の国やモチーフ、通貨単位などのファンがいることが多く、コレクターであれば1枚は持っておきたい!というようなコインがこのカテゴリにあたることが多い印象です。
また、購入価格500万円以上のものが資産保全型の特徴を持ちやすい傾向にあります。
資産保全という目的に用いられることから、オークションなどのオープンな市場に出てくることは比較的少なく、コレクター間のやり取りで売買が行われるケースも良く見られます。
コイン例:1677年 ハンブルク都市景観“ポルトガレッサー”10ダカット金貨
②資産運用型コイン
弊社では年間の値上がり率が最大で10%以上見込める可能性があるコインを「資産運用型」と捉えています。中には10か月程度で20~30%もの値上がり率を記録したコインも存在します。投資・投機的側面を持ち合わせたコインのカテゴリです。
購入価格100~300万円の層に資産運用型のコインが比較的多い印象です。
特別な希少性や人気を持っていて、市場に出てくると大きな話題になる特徴があります。発行枚数・鑑定枚数が極端に少ないものや、モチーフが人気のコインかつ高グレードのものなどが分かり易い例でしょう。
その人気ゆえに市場に出てくることが稀で、非常に需要が高い為、入手自体が困難であることが難点と言えます。
コイン例:1896年 ハンガリー建国1000年記念 9ダカット金貨
1982年 エリザベス2世 5ポンド金貨
1976年 アメリカ合衆国 独立200周年記念 金メダル
他、その時々の「トレンド」になっている金貨類
③コレクション型コイン
こちらは①、②に比べると値上がり率は比較的緩やかな傾向にあるコインです。
世間で取引されるアンティークコイン全体では、ここに当てはまるコインが最も多くなります。
ここでご注意いただきたいのが、①、②のように短期的な値上がり率が不明瞭であるとしても、軽視はできないという点です。
正しく選んだアンティークコインの価値が極端に下がることはないというのは、コインの「保全性」が働くところですので、購入した資金の保全に活用できます。
また値上がり率についてはコインの「教養性」に通じる点でもありますが、記念コインがアニバーサリーイヤーを迎える際に高値で取引される事や、市場に出回る枚数が少なく、存在が広く認知されていないものであっても、その1枚に対して熱烈な想いを持ったコレクターとの取引に繋がることがあります。
番外編:地金型コイン
海外各所の造幣局では毎年一定の重量・価格での純金製コインを大量に発行しています。カナダのメープルリーフコインや、中国のパンダコインなどが代表的なものでしょう。
これらはコイン専門ではない業者でも買取広告などを出していることがあるため、お目にしたことがあるかもしれません。
これらはアンティークコインと呼ばれる品々と異なり、常に市場に新たなコインが供給されている状態ですので、地金以上の価値を持つことは基本的にありません。
(例外的にこれらのコインが発行され始めた年のものなどは希少価値がつけられ、一定以上の高額で取引されることがあります。)
状態の良いものが手に入りやすくなっていますので、新品金貨の輝きを愛でるために1枚所有しておく、などもまた一つの楽しみ方かもしれません。
コインを活用した資産保全ポートフォリオ一例
アンティークコインを市場価値・値上がり率でとらえた時、主に3カテゴリに分類できるという事をお話しして参りました。
コインを用いた資産保全・資産運用を考える際はこれらの分類を考えながら、ご自身の資産ポートフォリオとコレクションを築いて頂くことをお勧めしております。
ポートフォリオの具体的な組み方については改めて詳細な記事を投稿しますが、一例としましては、1000万円の予算がある場合、1000万円のコインを1枚購入するのではなく、500万円のコインを1枚、200~300万円台のコインを2枚という形で資産を分散して頂くのが基本になります。
この一例の場合の具体的なポートフォリオ構成は、例えば以下のコインの組み合わせです。
コイン例:1687年 ジェームズ2世 5ギニー金貨
+
1896年 ハンガリー建国1000年記念 9ダカット金貨
+
1982年 エリザベス2世 5ポンド金貨
より具体的なポートフォリオの組み方に関する記事はこちら
ここまで資産保全を中心にアンティークコインの活かし方をお伝えして参りました。コインを選ぶときには現物資産の面を1つの材料として考慮すると、アンティークコインがさらにかけがえのないものになります。
もちろん、お金に換算した価値だけがコインの魅力ではありません。
繰り返しにはなりますが、アンティークコインは前提が資産保全用であって、ものによって投資・投機的などの資産運用手段にも“成り得る”、歴史的なロマンあふれる芸術品です。
投資・投機を第一目的として着手するのは本質から少々離れた関わり方であると言え、また投資的側面ばかりを強調するプロは、一緒にコインと向き合うには不安な面があるかもしれません(あくまで弊社の方向性に基づく意見です)。
私どもとしましては、愛するコレクションでありながらご自身の資産を守ってもくれる、最高の1枚に出会えるお手伝いができれば幸いに存じます。
noteにもアンティークコイン記事を掲載しております。是非ご覧くださいませ。